工房コラム vol.11 アーチ矯正

2017/09/11

工房では1700年代オールド楽器のアーチ矯正中です。

古い楽器は長い期間弦の過酷な張力を受け続けているため、表板や裏板が部分的に大きく凹んでいることがあります。

この楽器の場合裏板が魂柱からの圧力によって大きく押し出され、相対的に逆側が落ちてしまっているのが写真の影からお分かりいただけるかと思います。

 

こういった場合は熱した砂を袋に入れて板と共に石膏型に押し当てながら、時間をかけて自然な形に戻していきます。

アーチが変形していると見た目が良くないことはもちろんですが、音にとっても影響が出ていることは大いに考えられます。

アーチ矯正をすることで何がどう良くなるかを説明することは難しいですが、楽器の振動を水の波紋に例えるとイメージが伝わりやすいかと思います。

水にポチャンと物を入れると波紋が拡がるように、楽器の振動も駒、魂柱を中心に楽器の隅々まで綺麗に伝わることが理想です。

そこで楽器に不自然な歪みや凸凹があると振動の伝わり方に無駄が生じてしまい、結果としてその楽器の響きが最大限に得られなくなるといった感じでしょうか。

「綺麗な音の楽器は綺麗なアーチを持っている」というような言葉を聞いたことがありますが、これは私たちが修理、修復を行う上での大切なテーマの一つだと思います。

 

 

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