工房では立て続けにビオラの継ぎネック修理です。
継ぎネックをする理由はいくつかありますが、今回はネックの長さの調節が主な目的でした。
ネックの長さとは表板の上端から指板とナットの境目までの距離です。
この長さとf孔の刻みの位置は比率が決まっていて、バイオリンとビオラは2:3でチェロは7:10です。
バイオリンの場合標準値が130:195でチェロは280:400(ミリ)になります。
ビオラの場合はボディサイズに幅がありますので標準値はありませんが、比率自体は2:3です。
この比率を基準として、駒を立てる位置を決めます。
しかし写真の2本のビオラはいずれも1センチ以上ネックが短かったため継ぎネックしました。
1、2ミリのずれであれば誤差の範囲で特に問題ありませんが、1センチはさすがにポジション感覚に違和感が出ます。
もっともビオラの場合「ボディが小ぶりなのでネックを長くして張力を強くしよう」とか、「ボディが大きいのでネックは短めでポジションの間隔を狭くしよう」とか、職人によってあえて比率通りでないネックの長さにすることもあると聞いたことがあります。
オリジナルネックの場合、製作者の意思を尊重すべきか…どうしようか…と悩みますが、継ぎネックする際はやはり2:3の比率に合わせるべきだと私は考えています。
ちなみに写真手前の楽器はすでに一度継ぎネックされていました。
たとえネックの寸法がおかしくても、その楽器のみを生涯使い続けるという方はその楽器に慣れてしまえば特に問題はないのかもしれません。
しかし、いずれ買い替えを考えている、または複数の楽器を使い分けるという方はあまりに寸法の逸脱した楽器を使用することは色々と不都合が生じますので、楽器購入の際は気にされたほうが良いと思います。
もちろんバイオリンやチェロも同様です。